تسجيل الدخول炭焼きには副産物として木酢液と木タールができる。
木酢液は強い臭いと「酢」の字が示す通り酸性なので動物避けや害虫対策、殺菌などに使われていたと、ルダーが言っていた。 木酢液は蒸留するとメタノールになることだけが知識としてある。 どうやればいいかの知識がないとこが惜しいな。 メタノールが精製できればアルコールランプが作れるのに……。 木タールの方は記憶が確かなら(前世知識は転生ボーナスだから確かなんだけど)正露丸の主成分だ。 北欧ではその昔万能薬と呼ばれていたってサウナ関連の記事で読んだ。 もちろん、樹種で成分や効果が違うだろうし、こっちの木タールに同等の効用があるかは試してみないと判らないけどね。 視察の限り生産に関しては怖いくらい順調だ。 問題があるとすれば、生産が順調すぎて雑木林が荒れていることかな。 元々の村の生活に必要な木材を調達するために人の手を入れていた場所なんだけど、村の復興のための建築材伐採やルンカー、炭の大量生産に想定以上のペースで切り出した「貴重な話が聞けたよ、ありがとう」 すっかり打ち解けた気になっていた男は「なんのなんの」と横柄に手をふる。「君の処遇は改めて明日決定するつもりだけれど、今日のところはこのまま部屋に戻ってもらうことにしよう」 なんというか、ジャスは阿吽の呼吸でも心得ているかのようになにも言わないうちに男に縄をかけ出す。「ちょっ、ちょっとこれは?」「君が囚われの身であることに変わりはないんだよ?」 そう金魚みたいに言葉もなく口をパクパクされても対応は変わらないよ? ま、対応は最初から決まっているんだけど今日はこれから村をあげての大宴会だからね、不測の事態は困るんだ。 ジャスが部屋に男を押し込むのを確認して僕は家を出る。「終わったのかい?」 外では律儀に見張りについていたルダーが声をかけてきた。「終わった終わった。今後の村の計画になかなか有意義な情報があったよ」「そりゃあよかった」 遅れて鍋を抱えたジャスが出てくる。「見張りの当番はいつまでなんだい?」「日暮れまで」 とルダーに鍋を返しつつ答える。「じゃあ、宴で待ってるよ」 僕はそう言い残してルダーとその場を離れた。 向かったのは正面門。 二棟の櫓にはサビーとオギンがいる。「お館様」 僕らを見つけたオギンがスクワラーのようにするすると降りてくる。「見張りは通常体制に戻すよ」「襲撃の危険はない……と?」「そ。あいつの情報だ。信憑性は僕が保証する。二人とも宴まで休んでいいよ、ご苦労様」 そう告げて、今度はルダーの家へ。 家の前ではアニーがカルホと遊んでいた。 年の近い友達がいるのはいいことだよ。 多すぎるとそれはそれでややこしいことになるんだけどね。 あ、これは前世の経験だわ。 二人に軽く挨拶をして家に入ると、ヘレンは宴の準備で大鍋に食材を放り込んでいた。 僕は彼女にスープ
まずは飴の方で行ってみることにしよう。「申し遅れたかな? 僕はこの村の村長をしている」 まだカッコ仮……だけどね。「村……長?」 惚けた顔で男は繰り返す。「意外だろうね」 あ、こいつあっさり頷きやがった。「噂で聞いているだろうけど、この村は二年前に野盗に襲われて一度壊滅しているんだ。僕は唯一の生き残りとして暫定的に村長をやっている」 そこ! 「なるほど」なんて納得するんじゃない! 僕が顔を引きつらせたのをどう解釈したのか、男が蒼ざめた顔で見上げてくる。 いけね、話の振り方間違えたか?「あー……でも、そんなことはどうでもいいんだ。今はこの町でひっそりと暮らしていられれば」 たぶん無理だけど。 リリムが吹き出す。 チッ、また独白を読みやがった。「そこでだ、君にこの村でひっそり生きるための情報提供をしてもらいたい」「ジョウホウテイキョウ?」 これはどういう意味でのおうむ返しなんだ?「君の知っていることを教えてくれればそれでいい」「見返りはあるのか?」 いや、君は本来そういう立場じゃないって自覚ないの?「情報次第だ」「…………」 …………。「……なにが知りたい?」 ホッ。 第一段階の交渉はクリアした。 僕は彼の縄をほどき、リビングへ案内する。 おっと、ひと鞭くれてやるのを忘れちゃダメだな。「逃げ出すつもりなら死ぬ覚悟をしてくれよ。危害を加えるような人間に情けをかける気はないからね」 はい、ぶるっちゃいましたね。 ま・実際、彼以外はみんな死んでるし、説得力あるべ。 イスに腰掛けると、ジャスが温めたスープをよそってそれぞれの前に置く。「まずは食事といこう」 と、僕がいうと「うまいぞ」 と、ジャスがいう。 いいフォ
「ヘレンは順調かい?」「ああ、おかげさまで安定期だよ。そうでもなきゃスープなんて作ってもらえてないだろ」 確かにちょっと前までつわりがひどくてルダーが食事の支度をしてたな。「どっちかな?」「さあな。前世世界じゃあるまいし、生まれてくるまで判らんよ」「違いない」「アニーは妹ができると信じてるみたいだけどな」「そうか。村が復興して初めての子供だね」「そうだな。どうでもいいが、ジャリの視線が痛いわ」 憧れの姐さんだったみたいだからねぇ。「そういや、チャールズとガブリエル。正式に結婚することにしたそうだ」「そりゃめでたい」 なんてとりとめもなく話していると案外すぐに着くもんだ。 見張りにはジャスが立っていた。「ケガは大丈夫かい?」「ザイーダが言うにはこれくらいの傷なら痕も残らないんじゃないかって」「そりゃあよかった」「うまそうですね。ヘレンさんのスープでしょ」 よく判るねぇ……。 ああ、もともと同郷ってか、ヘレンを慕ってついてきたんだっけか。「一緒に食う?」「いいんすか?」「いいよ」「ルダー、ごめん。ちょっとの間代わりに見張りお願い」「はいはい」 ルダーは二つ返事で引き受けてくれた。 中に入ると殺風景な家だった。 腰を据える気なんかサラサラないって言うのが家財道具から見て取れる。 奥の部屋のドアを開けると、ベッドの上に後ろ手に縛られた男が、心配そうにこちらを見てくる。 僕は辺りを見回して武器になりそうなものを確認する。 椅子とか鍋釜程度だな。 包丁さえないってのはどうやって調理してたんだ? ジャスに指示して縄を解く。「腹が減ったろ? 一緒に食おう」 その提案はよっぽど彼の想定外だったんだろうか? 惚けた顔して返事一つ返ってこない。 スー
階下から漂ってくるおいしそうな香りに起こされた。 体は少し重い。(仕合の後はこんな感じになるとこが多かったな) などと妙に懐かしく思いながら下に降りる。「よう、やっと起きてきたな」 と出迎えてくれたのはルダーだった。 むーん……微妙に嬉しくないな。(やっぱり女性に起こされたい) などと思いつつも、なんでまたルダーが僕の館にいるのか疑問に思っていると。「ヘレンにな」 と、まるで僕の心が読めるかのように説明してくれる。「ヘレンがな、ずっと気を張ってたやつは肩の荷が下りると体調を崩すことが多いから、あったかくてうまいもんを食べさせてやれって持たせてくれたんだ」 なるほど。 おじいさん商隊長さんが亡くなったのもそんな感じだった。「滋養にもいいぞ。デーコンポモイトスープだ。肉はラバトの塩漬けを使ってる」「それはうまそうだ。じゃあ、遠慮なくごちそうになるよ」「おぅよ」 もう随分前から自炊になっていて、最近は食べる機会もめっきり減ったけど、ヘレンの料理はうまいんだ。 食事をしながら僕は村の様子を訊ねる。「今日はみんなゆっくり起きて今は村人総出で宴の準備をしてるぞ」 農作物の収穫作業も一段落ついてるし、雑木林の収穫はピサーメ以外まだ少し早いと聞いてるからちょうどよかったのかもしれない。「誕生会と収穫祭と戦勝記念の宴だね」「おお、景気がいいな」「捕虜の容体は?」 そう訊ねると、ルダーの声のトーンが少し落ちる。「二人はお館様が去って間もなく死んだ。もう一人は『苦しい、殺してくれ』って言うんでイラードが楽にした」 そうか。「生き残りは例の男の家で見張られている」 手引き役の男は戦闘で死んでいるから、今は空き家ってことになるんだし有効利用ってやつだな。「様子は?」「縛られてるからって
「みんな!」 と、事後処理にあたっている村人を呼び止める。 みんな、初めての戦闘だったろう、勝ったのも初めてに違いない。 表情には興奮冷めやらぬって色がありありと見える。「ご苦労様。まだ後片付けもあってしばらく寝られないかも入れないけど、明日は僕の誕生日でもあるから戦勝祝いも兼ねて宴を催すよ!」 それを訊いて、全員が拳を突き上げて喜びの声を上げる。 !「ああ、そうだ!」 僕が声を張り上げると、再びみんなの注目が僕に集まる。「勝鬨をあげよう」「かちどき?」 ジャリが、不思議そうにその単語を繰り返す。「うん、勝ったことを喜ぶちょっとした儀式があるんだ」 と、やり方を説明すると、みんな面白そうだと一度僕の前に集まってくる。 事後処理に村人全員集められているようだ。「行くよ」 鉄剣を少し明るくなりかけている空に掲げる。「えいっ、えいっ」 僕の呼びかけにみんなが応える。「オォッ!」 うおおぉっ!! たかまるっ! たぎるっ!! これ、クセになるね。 団結したーって気になるんだね、勝鬨すげえや。 村人たちもおんなじ気分のようだ。 前世じゃ、ダサいと思ってたんだけどなぁ……なにかな? シチュエーションの問題だったのかな?「オギン」「はい、お館様」「サビー」「なにか?」「二人は僕と一緒に家に戻って寝るの命令ね」「かしこまりました」「イラードはここの指揮を任せる」「かしこまりました」「ガーブラとザイーダは正面門の見張りを頼むよ」「了解!」「サビーとオギンは昼前に見張りの交代をよろしく」「なるほど、了解です」 それにしたって、彼らにおんぶ抱っこだな。 今回は小規模な野盗相手の戦
僕はこう見えても村のリーダーだ。 まだ十六……いや、日付変わって十七歳か。 若くて経験不足だと思われてるんだろうけど前世では半世紀近く生きていたわけだし、会社でそれなりの地位についていた。 いわゆるプロジェクトリーダーを任されて十人以上の部下を率いていたことだってある。 そんな経験豊富な僕が、歴史オタクの知識を総動員して戦術を練った対野盗戦だぞ。 初陣だからって遅れをとると思っているのか? …………。 なんて一人で興奮していたらあらかた戦闘が終わってた。 あらぁ?「何人か生き残ってますが、どうします?」「え?」 慌てて辺りを見回すと、確かに重症だったりで虫の息なやつや戦意喪失で無抵抗に縛られてる男たちが全部で四人。 頭目はイラードたちが倒したらしい。 手引き役の男は……ああ、南無南無……。「こちら側の被害状況は?」「ジャスほか数名が切り傷を受けていますが、重傷者はいません」 ほっ、それは良かった。「チャールズとガブリエルを呼んで傷の手当てをしてもらってくれ。彼らも……」 と、野盗の生き残りを指差す。「同様に」「本気ですか!?」 と、抗議の色を出して訊いてきたのはザイーダ。 うむ、いつも通りの冷徹な反応だな。「本気だよ」 情報は乱世の生存戦略に最も必要なものだからね。 聞きたいことはいっぱいあるんだ。 口を割ってもらうにはこっちにいい印象を持ってもらわなきゃならないんだよ。 心を開いてもらうのも大事なことだよ? 拷問で口を割らせる手もあるけど後味悪いし、その後の使い道も考えられるからね、フフフフフ……。 相手は頭目を失った野盗なんだし、根性なさそうな下っ端っぽいから、こっちの方が有効でしょう。「何人助かりそうかな?」 彼らに聞こえないようにオギンに耳打ちすると、「一人でしょうね」 との
「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」「なにそれ、美味しいの?」 え?「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」 だよねー。「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」「それって実際あてになるの?」「参考程度には」 だめじゃん、そんなの。「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」 リリムに言われて気がついた。 お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影
「逃げたのはガキ一匹か」 と、僕の真下で傷だらけのごつい男が言っている。 こいつが盗賊団の頭目と見た。「へい、多分」「多分だと!?」「へ、へ……」 あたふたした下っ端が頭目にぶん殴られ、仰向けにぶっ倒れる。 気絶してろ! 盛大に気絶してろよ、でなきゃここにいることがバレる。 僕の祈りは天に通じたのか、そいつは白目をむいて動かない。「このさらに奥に行ったかもしれませんぜ」「ならいい」 頭目は、一言吐き捨てて踵
さて、ここからは前世の記憶をフル活用だ。 襲ってきたのは、十数人の盗賊団。村には女子供を含めて三十人ちょっと。ここは本当に農村の一集落だった。 ん? この世界は前世知識的にどれくらいの文明水準なんだ? くそっ、ど田舎の未成年じゃ参照知識がなさすぎる。 異世界転生ものならそれなりの環境に生まれ直させろっての。 ──って言っても仕方ないわけで、そもそもテンプレの神様にあった記憶がない。 現世の記憶を手繰り寄せてもなろう系のお作法である知ってるゲーム世界的な場所でもなさそうだ。 あ、もっとも僕、
「人生やり直せたらなぁ……」 そう思っていたことが僕にもありました。 ありましたが……。 だからってこれはないんじゃないでしょうか? こんな状態で前世の記憶が蘇るとか、神様の仕業だとしたら「あんたバカぁ!?」って罵ってやりたい。 いいや、一発殴らせろ。 こんな切羽詰まった状態だが、現在の状況を冷静に確認分析だ。 まず、ここは村はずれの雑木林をちょっと入







